給料水準の低い飲食業界で働きながら、何も考えずに貯金を増やすことは出来ません。
この記事では、「飲食店開業のための自己資金を確実に貯める方法」を解説します。
私はレストランサービス経歴17年、そのうち2店舗でマネージャー経験があり、日本とイタリア双方のソムリエ資格を取得しています。現在は小さなレストランを順調に経営していますが、過去にはたくさんの失敗を経験し、そのたびに試行錯誤をしてきました。
結論、飲食業界で起業するためには、自己資金と生活防衛資金を合わせて、500万円が必要です。
そして、そのお金を貯めるためには、なんといっても「家計改善」が必須となります。
将来の飲食店開業を目指す方にとってはもちろん、飲食業界で働く全ての人にとって参考になるお話しもあると思います。ぜひ最後までご覧ください。
飲食業界の給料で貯金は出来る?|知っておくべき前提知識
まず最初に知っておくべき前提知識として、飲食業界は給料が低く、計画的な貯蓄計画が無ければいつまでたってもお金は貯まらないということです。
金融広報中央委員会の調査によると、二人以上世帯の「宿泊業、飲食サービス業」の業種別貯蓄の平均値は574万円、中央値は100万円です。
世帯主の就業先産業別 | 平均(万円) | 中央値(万円) |
農林漁鉱業 | 1,384 | 200 |
建設業 | 1,033 | 237 |
製造業 | 1,332 | 380 |
運輸業、郵便業 | 622 | 103 |
卸売業、小売業 | 1,094 | 300 |
宿泊業、飲食サービス業 | 574 | 100 |
医療、福祉 | 1,009 | 215 |
公務、教育、電気水道業 | 1,699 | 710 |
その他サービス業 | 1,309 | 300 |
引用元:金融広報中央委員会
実態として、私の感覚と合致しているのは中央値の方です。平均値は、親の遺産を相続したケースなど、給料以外の収入で得たお金も含まれるため、少数の富裕層がデータに加わるだけで、大きく数字が引っ張られます。
この調査は、9つの業種別で分けられていますが、飲食業界はなんと、ワースト1位です。
ちなみに単身世帯では、平均値が287万円、中央値が3万円です。
データを見ると、貯金がゼロ、という人も沢山いそうね。泣
これらのデータから分かる通り、資金計画なしでは独立なんて夢のまた夢。飲食業界で働きながら無計画にお金を使い続けると、独立資金はおろか、将来の貯金すら出来ません。
飲食店で働くお金が貯まらない人の特徴7選
実際に、飲食業界で働いていて、お金が貯まらない人の特徴を見ていきましょう。
1.買い物に行く頻度が多く、衝動的な買い物が多い
休日に時間があるとき、用事もないのにショッピングモールや繁華街に出かけていませんか?無駄な浪費が発生するのは、こういったタイミングであることが多いです。
また、コンビニの利用が多い人も、お金が貯まらない人の特徴の1つです。
あちゃー、毎日コンビニ寄っちゃってるわ、、、
2.社内の人達と飲み会ばかりしている
社内で円滑にコミュニケーションを取るためには、時には飲み会も必要です。しかし、有益な話題が生まれない場で何時間飲んでいようが、それはただの浪費です。
同じ浪費をするのであれば、予定を立てて気の合う友達と遊びに行く方が、お金的にも時間的にも有意義に過ごせます。
3.「勉強」という名目で頻繁に外食をしている
飲食店で働く人が他のお店で食事をすることは、とても勉強になりますし、仕事に生かせることを得られる時もあります。しかし、「勉強のための投資」という名目で、聖域にしがちな場面もよくあります。
「投資」であれば、投じた額よりも大きなリターンを見込んでいるはずです。ではそれは、金銭的に、いつ、どのように、自分へと返ってくるのでしょうか?
雇われ社員のうちは払ったお金を経費にすることが出来ません。浪費と消費の区別をつけて、あくまでも外食は予算の範囲内ですることが大事です。
4.借金をしていて返済に追われている
独立を考えていらっしゃる方は、将来的に多少なりとも融資を利用されると思います。
そのときにすでに借金があると、融資が受けられない可能性もあり、受けられたとしても、借金に借金を重ねる経営者となります。
大前提として、借金をされている方は、起業の前に返済が最優先です。まずスタートラインに立つため、一日でも早く借金を返済しましょう。
住宅ローンも借金ですが、借入額が大きいケースが多いです。その場合、一括返済が難しいと思いますので、例外扱いとしてください。
5.給料が上がるごとに生活水準を上げている
「給料が25万円から30万円に上がったから広い家に引っ越しをする」など、昇給のたびに生活水準を上げていては、貯蓄率が一向に上がりません。
給料水準が高い環境で働き、生活を変えず貯蓄率を上げることが、目標達成までの最短ルートです。
6.家計管理をしていない
月々の収支の流れが把握できていなければ、貯金どころではありません。
月々の余ったお金を貯金をしていても、大型家電の故障や冠婚葬祭など、急な支出のたびに貯金を使っていては、いつまで経っても貯まりません。
7.ボーナスを貯金していない
旅行や趣味など、汗水垂らして働いた努力の対価として得たボーナスは、パーッと使ってしまいたい気持ちは痛いほど分かります。しかし、将来独立を考えている人は、全額貯金するくらいの心構えが欲しいところです。
ここまで偉そうに書きましたが、これらは全て過去の自分の特徴を参考にしたものです。笑
私もむかしは、貯金ゼロ、外食や飲み会で散財し、クレジットの引き落としは知らずにリボ払いを利用していた経験もあります。
そのおかげで、本格的に独立を決意した後の資金繰りは、かなり苦しいものとなりました。
私の場合、人との縁と運に救われて起業できましたが、再現性はまったくありません。皆さんには資金不足などで困ること無く、着実に成功するためのビジネスを掴んでほしいです。
飲食店開業のためにはいくら必要?|自己資金と事業融資の最適バランス
結論、個人で経営する小規模レストランを開業するための貯金額は、500万円を目安にしてください。
内訳は、開業のための資金300万円 + 生活防衛資金200万円です。
この金額を目標にするべき理由について説明をしていきます。
まず、10席程度の小規模レストランを開業する場合は、開業資金の目安は、500万円〜1000万円程度となります。ただし、立地や内装のこだわり、厨房機器の選定によって変動しますが、この数字をもとに話しを進めます。
【飲食店開業資金のエビデンス】
日本政策金融公庫のデータによると、飲食業の開業資金は平均2,700万円ですが、小規模レストランの場合はこれよりも低く、500万~1,500万円の範囲内で開業するケースが多いです。【日本政策金融公庫「2023年度新規開業実態調査」】
また、小規模事業者白書(中小企業庁)では、席数が少ない小規模店舗の開業資金は約500万〜1000万円程度が一般的とされています。
これらのデータに基づいて、10席程度のレストランを開業する場合は、1000万円以上は見込んで計画を立てることが重要です。
起業のための融資の考え方|最適な自己資金比率を考えよう
1000万円程度が必要な事が分かりましたが、これら全てを貯金で準備することは難しいと思います。そこで、ほとんどの飲食店経営者は、日本政策金融公庫や銀行からの融資を利用します。
ここからは経営者としての個人的な考え方ですが、私は自己資金の極端に少ない開業はまったくおすすめしません。なぜなら、借金の額が大きいと、当然月々の利息が膨らみますし、返済元金部分は経費にもなりません。
経費になるのは利息の部分だけです。返済元本は、利益から税金を引いたあとのお金で返済する必要があります。
経営者が資金繰りに困る原因の1つが、「自分のキャパ以上の借金をしてしまうこと」です。
飲食店の経営で、すでに成功されている方なら何も言うことはありません。しかし、初めて店舗を持とうとされている方は、サービスや料理のプロであっても、経営者としては初心者です。
その初心者が多額の借金を背負っても、まったく良いことがないので絶対にやめましょう。自己資金で300万円を準備して、700万円を借りるくらいでもギリギリのラインだと私は考えます。
フリーランスの最終防壁|生活防衛資金が必要な理由
また、開業資金とは別に、生活防衛資金も必ず準備しましょう。個人事業主になると、社会保険の観点から、会社員に比べて守りが格段に弱くなります。
具体的に、会社員の場合は病気や怪我で働けなくなった時は、次の経過をたどります。
しかし、個人事業主(フリーランス)の場合は、次のとおりです。
チューリッヒ生命の調査によると、病気やけがで働けなくなった人が、働ける状態へと回復するまでにかかった期間は、6ヶ月未満の人が80%です。
引用元:チューリッヒ生命
これらのデータをもとに、起業後に働けなくなった場合を想定すると、生活防衛資金は1年分以上あれば安心であることがわかります。
貯めるべき金額は生活水準によって人それぞれですが、「最低限の生活をするための貯金」と考えると、私は最低でも200万円は必要だと定義しています。
お金が貯まる家計をつくるための4つのステップ
目標金額が決まったところで、最後はお金の貯め方のお話しとなります。まず大前提として、焦りは禁物。長期戦で挑む覚悟が必須です。
焦ってしまうと、ギャンブルで一攫千金をねらったり、多額の借金を背負ったりと、リスクの範囲が大きくなりがちです。自分のリスク許容度を超えて行動すると、さいあく自己破産してしまうケースも珍しくありませんので、慎重かつ着実に目標金額の達成を目指しましょう。
親に頼ればいつでも借金返済ができるなど、リスク許容度の高い方はペースを上げても良いと思います。
具体的に、次のステップで家計管理を行えば、確実に貯金が出来る家計が作れます。
ステップ1|年間100万円の貯金が出来るように収支のバランスを整える
始めのステップは、月々の貯金の目標額を決めることです。
ここでの考え方で大事なことは、収入から支出を引いた残りを貯蓄するのでは無く、収入から先に貯蓄を引き、残りのお金で生活をするということです。
飲食業界は給料が少ないことは前述したとおりですが、家計管理で年間100万円の貯金目標をおすすめします。飲食店の起業は長期戦ですが、年間100万円の貯金でも、独立までに5年がかかります。
もちろん、毎月の貯金額を減らすと日々の生活にゆとりが出ます。しかし、目標までの期間があまりにも長すぎると、結婚や出産などのライフスタイルの変化で、軌道修正が余儀なくされるタイミングが出てきます。
これを考慮すると、飲食店の起業を決断してから、長くても5年くらいの間に開業してしまう事が、妥当な目標設定だと私は考えています。
【年間100万円の貯金をするための考え方】
「年間100万円の貯金」というと、設定が高すぎると思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、年間100万円を毎月で考えて見ると、手取り月30万円の人は、毎月の収入の2割(6万円)+ボーナスから30万円の貯蓄で達成可能です。家計で使えるおお金は、月24万円+ボーナスの残りですので、それほど無茶な設定ではありません。
もちろん、人によっては収入が低かったり、家庭の事情で支出を抑えても貯金が出来ない人もいると思います。その場合には、収入を上げるしか方法はありません。
今の職場で、手取りが30万円以上を見込めない場合は、給料水準の高い会社への転職をおすすめします。また、新卒や20代前半の若い人は、まずは、スキル習得や昇格による給料アップに注力するべきです。
収入を上げるために、まずはソムリエ資格の取得をおすすめします。
»ソムリエ資格を取得するメリット5選
ステップ2|クレジットカードと銀行口座の数を極力減らす
ここからは家計管理のためのステップに入ります。
家計管理を挫折せずに行うために、クレジットカードと銀行口座の数は極力減らしましょう。出来ればクレジットカードは1枚のみ、銀行口座も1つが理想です。
例外として、「保育料の引き落としがゆうちょ指定」など、どうしてもの理由がある場合はその銀行講座は所有したままで良いと思います。しかしその場合でも、「ゆうちょは保育料の引き落としのためにしか使わない」と、ルールを決めて、極力1つの銀行口座に集約してください。
クレジットカードの種類は何でもいいのですが、ポイントに惑わされない無料カードで十分です。
メインの銀行口座は、ATMに並ぶ必要のないネットバンクをおすすめします。楽天銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、GMOあおぞらネット銀行などがおすすめです。
ステップ3|決済手段は現金を使わず、家計管理アプリを使って支出を把握する
クレジットカードと銀行口座を減らせたら、いよいよ本格的に家計管理をすすめていきます。まず、買い物のときの決済手段には、現金を極力使わないでください。理由は、現金がもっとも使途不明金が発生しやすいからです。
使途不明金とは、家計簿と実際の現金とが合わなくなることです。
なるべく、クレジットカード、QUICPayやiDなどの電子マネーを使いましょう。
準備が整ったら、家計管理アプリを使って支出の把握します。おすすめの家計管理アプリは、私自身も使っている「Money Forward Me」です。
【Money Forward MEの特徴】
Money Forward MEは、金融機関の口座やクレジットカードを連携することで、入出金のデータが自動で取り込まれ、家計簿が自動的に作成されます。
収入、支出、貯蓄額をグラフや一覧で分かりやすく表示してくれるため、家計の全体像を簡単に確認できます。
複数の銀行口座やクレジットカードの残高も一元管理できるため、分散している資産も見逃すことがありません。
支出が自動的にカテゴリ(食費、交通費、光熱費など)に振り分けられるため、何にどれくらいお金を使っているかが明確になります。カテゴリーの品目は自分で作れますし、手動での修正も可能です。
今まで手書きで家計簿つけていたけど、これはすごく便利そうね!
Money Forward MEを使って、支出を漏れなく把握しましょう。
ステップ4|支出を固定費と変動費に分けて予算を立てる
最後に、毎月の支出の予算計画を立てます。ExcelやGoogleスプレッドシートなどで、簡単な表にしておくと見返すときに便利です。
最初は面倒な作業ですが、一度立ててしまうと管理は楽です。
家賃、水道光熱費、通信費、生命保険料などは、固定費として分類します。毎月固定の金額でなくても、およその額が決まっているものは固定費にします。
食費、医療費、被服費など、月によって大きく変わるものは、変動費とします。
火災保険、車検など、年単位で支払いがあるものは、年間固定費とします。
冠婚葬祭、家電の購入、旅行や遊興費など、毎月発生しないが、長期では発生する可能性がある支出を年間変動費とします。年間固定費と年間変動費は、月割にして計算します。
そして、分類した品目は、Money Forward MEの品目と紐づけしましょう。
予算と実績の比較をExcelなどで作成すれば完璧ね!
これら4ステップで収支が視覚化することにより、お金が貯まる家計となります。
飲食店で独立開業を目指す人の具体的な貯金方法
この記事では、「飲食店開業のための具体的な貯金の方法」について解説をしました。
まとめると、10席程度の個人レストランを開業するためには、およそ1000万円の開業資金が必要です。しかし、1000万円を貯めてから開業される人はとても少なく、多くの経営者は、日本政策金融公庫や銀行からの融資を利用します。
「融資」というと聞こえは良いですが、これはずばり「借金」です。そして「借金」は、経営者が資金繰りに困る一番の要因です。
どれだけ融資を受けるとしても、起業のための自己資金は最低でも300万円は準備しましょう。
また、怪我や病気で仕事ができなくなったときの備えとして、生活防衛資金を基礎生活費の1年分、最低でも200万円を準備しましょう。
自己資金と生活防衛資金をあわせた500万円を貯金するための具体的な方法は以下のとおりです。
ステップ1|年間100万円の貯金が出来るように収支のバランスを整える
500万円貯めるための目標期間を5年と設定し、年間100万円貯めれる家計をつくりましょう。
ステップ2|クレジットカードと銀行口座の数を極力減らす
家計管理をしやすくするため、収入と支出がある蛇口(クレジットカードと銀行口座)の数を絞りましょう。
ステップ3|決済手段は現金を使わず、家計管理アプリを使って支出を把握する
使途不明金をなくすため現金を極力使わず、Money Forward MEを使って支出を漏れなくつけましょう。
ステップ4|支出を固定費と変動費に分けて予算を立てる
固定費、変動費、年間固定費、年間変動費の4項目に分けて、月々の予算を立てましょう。
計画的に資金を貯めて、盤石な経営の基盤を作ってください。
頑張るあなたを応援しています!
またお会いしましょう!
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