飲食店開業の資金計画|失敗しない資金調達とキャッシュフロー管理

「自分のお店を開きたい!」
その夢を踏み出す前には、どうしても気になることがありますよね。

「開業するのに、いったいいくらかかるんだろう…?」
「自己資金だけじゃ足りないかも…お金はどうやって集めればいい?」
「お店を始めた後、ちゃんとお金は回せるのかな…?」

カプリ

夢はあるけど、お金の面での不安は大きいよね…。

開業資金と、開業後の「お金の流れ=キャッシュフロー」の計画は、お店の成功を左右する、めちゃくちゃ重要なポイントなんです。ここをしっかり押さえないと、どんなに素晴らしいお店を作っても、続けることが難しくなってしまいます。

私は飲食業界で20年以上働き、マネージャーも経験、日本とイタリアでソムリエ資格を取り、今は小さなレストランを経営しています。独立時には300万円の融資を受けて、約150万円の補助金を利用したこともあります。その経験から、資金計画やキャッシュフロー管理でつまずきやすい点、そして乗り越えるためのヒントをお伝えできます。

この記事では、飲食店開業を目指すあなたへ、必要な資金の考え方、堅実な資金調達の方法、お店のキャッシュフロー管理についてを、分かりやすく解説していきます。

ローマ

お金の話は、目をそらさずにしっかり向き合うことが大事だよ。この記事を読んで、不安を具体的な計画に変えていこう!

目次

資金計画とキャッシュフロー管理の重要性|失敗から学ぶ教訓

「手持ち資金は心もとないけど、やればなんとかなる!」

こんな勢いだけで開業するのは、とても危険です。なぜなら、飲食店の廃業理由の多くが「資金繰りの悪化」だからです。

ローマ

飲食店の廃業率は、1年で30%、5年で80%とも言われているよ、、、

繁盛店でも突然…キャッシュフローが止まる怖さ

ここで、私が間近で見た、ショッキングな事例をお話しします。

以前私が働いていたお店のすぐ近くに、誰もが知る老舗の有名レストランがありました。いつもお客様で賑わっていて、外から見れば経営は絶好調そのもの。パン屋さんを始めたり、店舗を増やしたりと、事業も拡大していました。正社員の雇用も、おそらく20名を越えていたと思います。

カプリ

へぇー!とても経営上手なお店なのね!

しかし、新型コロナウイルスの影響で状況は一変。客足が遠のき、経営が一気に苦しくなりました。規模を縮小するなどして必死に立て直しを図っていましたが、最終的には資金繰りが限界に達し、自己破産という道を選ばざるを得なくなってしまったのです。

そして、負債額は4億円超え。
経営者としてのキャリアを取り戻すには、とても時間がかかりそうです。

この出来事から私が学んだ教訓は3つあります。

教訓
外から見て繁盛していても、内情(利益やキャッシュフロー)は分からない

一見忙しそうに見えるお店でも利益が残っていなかったり、小さな住宅街に溶け込むお店でも、経営次第では大きな利益を残せます。

教訓
身の丈に合わない急な事業拡大や借入は、リスクを高める。

1店舗目の経営が順調であるがゆえ、身の丈以上のお金を借りることができてしまいます。お金があれば組織を大きくすることは簡単ですが、経営者の力量が不足していると、一瞬で倒産してしまいます。

教訓
キャッシュフロー(お金の流れ)管理を軽視すると、どんな名店でも立ち行かなくなる。

どんなに売上があっても、手元のお金がなくなったら、お店は続けられない。当たり前すぎることですが、あらためてキャッシュフローの重要性を感じました。

ローマ

経営破綻すると、従業員とその家族までを路頭に迷わせてしまう可能性もしっかりと考えようね。

開業資金の内訳|あなたの夢にいくら必要?目安と節約術

では、実際に飲食店を開業するには、どれくらいの資金が必要なのでしょうか?

お店の規模や業態、立地によって大きく異なりますが、主な内訳と一般的な目安を知っておくことが、計画の第一歩です。

ローマ

ここに挙げる数字は、あくまで一般的な目安だよ。地域や物件の状態、こだわるポイントで全然変わってくるから、必ず自分のケースで見積もりを取ってね!

1. 物件取得費

お店を借りるための初期費用です。
家賃の他に保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、前家賃などで、家賃の数カ月分がかかります。

  • 目安(都心10席程度): 月額家賃10~30万円の場合、初期費用だけで100万円~300万円以上になることもあります。
  • 目安(地方・郊外): 家賃が5~15万円程度なら、初期費用も抑えられます。
  • ポイント: 家賃は毎月の固定費。無理のない範囲で、立地とのバランスを考えて慎重に選びましょう。

2. 内装・設備工事費

お店の空間を作るための工事費用です。
厨房の給排水・ガス・電気工事なども含まれます。

  • 目安(スケルトン物件): 何もない状態から作る場合、1坪あたり40~60万円程度が相場と言われます。10坪なら400~600万円かかる可能性も。
  • 目安(居抜き物件): 前のお店の内装や設備が残っている場合、大幅に費用を抑えられる可能性があります。ただし、設備の古さや希望とのズレも考慮が必要です。
  • ポイント: ここが一番費用がかさみやすい部分。居抜き物件をうまく活用したり、DIYを取り入れたりする工夫も考えましょう。
ローマ

居抜き物件は初期費用を抑える大きなチャンスだけど、契約前に設備の動作確認や、必要な修理費用をしっかり見積もることが本当に大事だよ!

3. 厨房機器・設備費

コンロ、オーブン、冷蔵庫、食洗機、シンク、作業台など、厨房で使う機器です。バー形態の場合は、ワインセラーなども必要ですね。

  • 目安(小規模店舗): 150万円~300万円程度が一般的。メニュー構成によって必要な機器は変わります。
  • ポイント:  新品でなく、リースや中古品を利用する方法もありますが、個人的には注意が必要だと考えています。
    リースはいわばレンタルで、結局は割高になることが多いです。中古の厨房機器は安くても、新品に比べて長く使えず、故障のリスクも高いです。ただし、シンクや作業台のような「機械ではないもの」なら、中古で探すのも良い方法だと思いますよ。

4. 備品・家具類

お客様が使うテーブル、椅子、食器、グラス、カトラリー、レジ、電話、ユニフォームなどです。

  • 目安(10席程度): 50万円〜80万円程度1席あたり5〜8万円と考える計算です。
  • ポイント: お店のコンセプトに合わせて選びますが、中古家具店やアウトレット、フリマアプリなどを活用すれば、費用を抑えつつ良いものが見つかることもあります。

5. 運転資金

開業直後の売上が安定するまでの「体力」となるお金です。売上がゼロでも「固定費」は毎月必ず出ていきます。そのため、売上ゼロの最悪のケースを想定し、固定費だけでも支払い続けられるだけの運転資金を用意しましょう。

  • 目安: 最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の固定費を用意しましょう。月々の固定費が40万円なら、120万円〜240万円程度が必要になります。
  • ポイント: これが不足すると、あっという間に資金繰りが厳しくなります。自己資金で事前に準備しておくことが、精神的な安定にも繋がります。

6. その他の費用

上記以外にも、細々とした費用がかかります。

  • 許認可取得費用: 飲食店営業許可など(数万円程度)。
  • 広告宣伝費: オープン告知のチラシ、ショップカード、SNS広告など(10万円〜50万円程度)。
  • 最初の仕入れ費用: 開店時に必要な食材や飲料(数十万円程度)。
  • 求人広告費: スタッフを募集する場合(数十万円程度)。

開業資金の総額目安|想定以上にお金がかかる心構えをしておこう

これらの項目を合計すると、小規模な個人経営の飲食店であっても、一般的には800万円~1500万円程度の開業資金が必要になるケースが多いと言われています。

もちろん、これはあくまで目安であり、居抜き物件の活用や徹底したコスト削減で、これよりも大幅に費用を抑えることは十分に可能です。

ローマ

計画段階での見積もりは、どうしても甘くなりがち。僕の経験やまわりの経営者の話しを聞くと、計画していた金額の1.5倍くらいかかってしまうことも珍しくないそのくらいを想定しておくくらいでちょうどいいよ!

カプリ

1.5倍もっ!!やっぱり事前準備が大切なのね、、、

キャッシュフロー管理|お金の流れを止めないための考え方

開業資金の準備と並んで重要なのが「キャッシュフロー管理」です。

キャッシュフローとは、簡単に言うと「お金の流れ」のこと。これが止まると、お店は続けられなくなります。

利益とキャッシュフローは違う!「資金繰り表」で流れを掴もう

帳簿上で利益が出ていても、手元に現金がなければ意味がありません。売上の入金が遅れたり、大きな支払いが重なったりすると、キャッシュフローは一気に悪化します。

ローマ

利益はあくまで計算上の数字。キャッシュフローは、手元にいくら現金があって、いくら入ってきて、いくら出ていくかの流れ。経営の生命線なので、常に見える化をしておくことが重要だよ!

このリアルなお金の流れを把握するために役立つのが「資金繰り表」です。これは、損益計算書(利益を計算する表)とは別に、実際のお金の出入りだけを記録・予測する表のことです。

まずは、日本政策金融公庫(公庫)のウェブサイトで提供されている「資金繰り表」のテンプレートを活用するのがおすすめです。必要な項目が分かりやすくまとまっているので、初めての方でも比較的取り組みやすいはずです。

>>日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード(中小企業事業) 
※上記リンク先から「資金繰り表」をダウンロードしてください。

カプリ

数字を入力するだけだから、簡単に作成できそうね!

この資金繰り表を使って、毎月のお金の出入りを予測し、月末にいくら現金が残るかを把握する習慣をつけましょう。そうすることで、将来の資金ショートを予測し、早めに対策を打つことができます。

キャッシュフローを良くする具体策|健全な金銭感覚を身につける4ステップ

資金繰り表で現状と未来を把握することも大切ですが、同時に日々の「お金の使い方」に対する健全な感覚を身につけることが、キャッシュフローを安定させる上で非常に重要です。理想論ではなく、今日から意識できる実践的なステップをお伝えします。

STEP
「現金管理」の手間とリスクを減らす

レジの現金在高が合わない、小口現金の管理が面倒、、、そんな経験はありませんか?
現金は日々の管理が難しく、帳簿とのズレも生じやすいものです。仕入れや経費の支払いは、記録が明確に残る銀行振込やカード決済などを中心にして、現金の使用を最小限にしましょう。現金を使わざるを得ない場合は、個人の財布から「立て替え払い」をすると、帳簿が狂うことがないのでおすすめです。

STEP
クレジットカードは「短期の借金」と心得る

クレジットカードでの経費支払いは便利ですが、支払いが先送りされるため、「今、手元にあるお金以上にお金を使ってしまう」という大きなリスクがあります。これは、将来のキャッシュフローを圧迫する「短期の借金」をしているのと同じこと。安易にカード払いに頼るのではなく、「今、支払える現金があるか?」を常に意識することが重要です。

STEP
「使えるお金の範囲で使うこと」を習慣化する

「クレジットカードは後払いなのは分かってるけど、気がつくといつも使いすぎてしまう」なんて方も多いと思います。そんな場合には、プリペイド機能が付いたクレジットカードがおすすめです。「即時払い」の感覚なので、使いすぎを防ぎ、健全な金銭感覚を養う良い手段となります。

STEP
支払いと入金のタイミングを正確に「把握」する

健全な金銭感覚を身につけた上で、お金の出入りのタイミングを把握することも重要です。仕入れ代金の支払日はいつか?クレジットカード売上の入金サイクルは?家賃や給料の支払日は?これらのタイミングを正確に把握し、資金繰り表に反映させ、「いつ、どれくらいのお金が必要になるか」を常に予測することが、安定経営の鍵となります。

カプリ

現金管理は間違いが多くて不正も起こりやすい。クレジットカードは短期の借金。普段からなんとなく使っているけど、言われてみると納得ね!

ローマ

プリペイド機能が付いたおすすめのクレジットカードは、「マネーフォワードビジネスカード」。クレジットとプリペイド両方の機能が付いていて、決済が即時反映されるから、今月はあとどのくらい使えるのかが一目で確認できるよ!

また、簿記の知識があれば、キャッシュフローに対する数字の理解がより深まります。
>>飲食店経営に必須の簿記知識|数字を味方につけるための勉強法と損益分岐点の考え方

資金調達の方法|夢を実現するための選択肢

開業資金や運転資金をすべて自己資金で賄うのが理想ですが、目標額に届かない場合もあるでしょう。そんな時は、外部からの資金調達も検討します。ただし、安易な借金は「将来の負担」になることを忘れてはいけません。

経営の土台|自己資金の目安は最低200万円

まずは基本中の基本である自己資金。どれだけ自分で用意できるかが、計画の実現性と経営の安定性を左右します。
融資を利用する場合でも、十分な自己資金を貯めること自体が、経営者としての計画性や管理能力の証明になります。

飲食店で働きながら開業資金を貯める方法は、こちらの記事も参考にしてください。
>>飲食業界で働く貯金ができない人必見|開業資金を貯めるための4つのステップ

このブログでは、開業資金として最低200万円、そして万が一のための生活防衛資金(運転資金とは別)として200万円、合わせて最低400万円の自己資金を用意することをおすすめしています。これだけあれば、開業後の予期せぬ事態にもある程度対応でき、精神的な余裕を持って経営に臨めます。

補助手段|公庫や銀行からの融資を検討しよう

どうしても自己資金だけでは足りない場合の選択肢として、融資があります。飲食店は初期投資が大きいビジネスですが、計画に土台がないと、費用はいくらでも膨らみます。「融資」は、だたの「借金」です。計画的に利用しましょう。

日本政策金融公庫(公庫)は、創業支援に積極的な国の機関です。比較的低い金利で融資を受けられる可能性があるので、まず相談してみる価値はあるでしょう。また、信用金庫も、地域に根ざした非営利法人で、個人事業主にも親身になってくれることが多いです。

逆に、メガバンクや地方銀行は、営利目的の民間企業。大きな企業との取引が中心になることが多いです。初めて個人でお店を開業する場合は、公庫や信用金庫が一番の相談先であることを知っておきましょう。

ローマ

借りられる額ではなく、必要最低限の額だけを借りる、という視点が大切だよ!

返済不要の支援|補助金や助成金が利用できるか情報収集しよう

国や自治体が、創業や特定の事業に対して、返済不要の資金を支援してくれる制度もあります。条件に合うものがないか、情報収集する価値はあります。

しかし、注意点もあります。補助金は、申請すれば必ずもらえるわけではありません。

 また、申請から実際に入金されるまでには半年以上かかることも珍しくありません。補助金をあてにして開業計画を立てるのは危険ですし、「補助金が通らなかったら開業できない」という状況は避けましょう。

私自身も補助金を利用した経験がありますので、こちらは別の記事で解説しています。
>>知っておきたい補助金の種類と賢い利用方法(coming soon!)

カプリ

やっぱり、まずはしっかり自己資金を貯めることが一番大事だね!

成功への近道|小さく始めて固定費を抑えよう

最後に、私がこれまでの経験で強く感じていることをお伝えします。それは、「小さく始めることの重要性」、そしてそれに伴う「固定費を抑えることの大切さ」です。

特に個人で開業する場合、最初から理想を追い求めすぎて、広い店舗を借りたり、多くのスタッフを雇ったりするのは、資金的にも運営的にもリスクが高くなります。なぜなら、家賃や固定の人件費といった「固定費」は、売上があってもなくても毎月必ず出ていくお金だからです。

固定費が高いと、毎月クリアしなければならない売上のハードルが自然と高くなります。これは経営にとって大きなプレッシャーとなり、資金繰りを圧迫する原因にもなりかねません。開業当初は売上が不安定なことも多いですから、このハードルはできるだけ低く設定しておくのが賢明です。

だからこそ、「スモールスタート」で固定費をできる限り抑えることを強くおすすめします。具体的には、身の丈に合った家賃の物件を選び、少ない席数で始め、最初は自分一人でも回せる体制にする、といった工夫が必要です。

カプリ

小さく始めると、毎月の経営のプレッシャーを減らすことにも繋がるんだね!

ローマ

その通り!小さく始めれば、借金に頼るリスクも減らせるし、もし計画通りにいかなくても方向転換しやすいよ。まずは確実に利益を出せる体制を作り、そこから少しずつお店を育てていくのが、失敗しないための賢明な戦略だよ。

まとめ|資金計画を万全にして夢への扉を開けよう!

飲食店開業には、情熱だけでなく、しっかりとした「資金計画」と「キャッシュフロー管理」が不可欠です。

まず、開業に必要な資金を具体的に計算し、身の丈に合った計画を立てましょう。
一般的に、小さな個人店でも、800万円〜1500万円の開業資金が必要です。

そして、開業後を見据え、お店の血液であるキャッシュフローが滞らないよう、日々の管理と将来の予測を行います。そのためには、「資金繰り表」の作成が有効な手段となります。

カプリ

お金の計画って、ちょっと大変そうだけど、これを乗り越えれば、夢の実現がぐっと近づく気がする!

難しく考えすぎず、まずはあなた自身の状況に合わせた簡単な事業計画シミュレーションを始めてみませんか?融資を受けるときにも必要な事業計画書の作成は、こちらの記事も参考になると思います。
>>飲食店開業の羅針盤!融資にも役立つ事業計画書の書き方と項目別ガイド

この記事が、あなたの輝かしい未来への後押しとなれば幸いです。

ローマ

またお会いしましょう!

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この記事を書いた人

レストランサービス歴20年、個人レストランの経営者。
日本とイタリア双方のソムリエ資格を取得。
長時間労働や低収入に悩む飲食店で働くあなたへ!キャリアアップやホールスタッフでも独立できる方法を伝授しています。
正しい方向性で努力をすれば、飲食店社員にも輝く未来があります!!

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